オディロン・ルドンという画家がいる。
1840年生まれのフランスの画家。
前半はリトグラフを用いた、モノクロの作品が占めるが、
一人目の息子が死去し、二人目の息子が生まれてからは、鮮やかな色彩を使うようになる。
Googleで画像検索をかければわかるだろうけど、
この人の絵は特殊だ。
生首を乗せた眼球の気球とか、
子供の顔をした植物とか、
だけど36605が一番怖いと思うのが、
「キュクロプス(Cyclops)」。
ギリシャ神話に登場する一つ目の巨人で、海のニンフであるガラテイアに恋をし、
その恋人であるアーキスを投石により殺してしまう。
そのキュクロプスがガラテイアを山の頂から覗き込んでいる、という絵なのだけど、
ふわふわと柔らかな色彩とは裏腹に、なんかこぅ~…不穏な感じがキモチワルイ。
別に殺戮場面が描かれているわけではないし、険しい表情をしているわけでもないのだけど、
気持ち悪い。
見ていてすごく不快になる。
サイクロプスの目が、ふわふわと画面上を漂っていて、焦点が定まっていないというのが不気味。
いつその目がニンフではなく、サイクロプスを見ている36605に氣づくか、
びくびくしている氣分になる。
ルドンの絵は、モノクロームの世界より、色彩の世界のほうが怖い、と思う。
で、何故いきなりルドンのことを持ち出したかというと、
姫路のほうでルドンの特別展をやるというのを、
NHK教育「新日曜美術館」のアートシーンのコーナーで見たから。
コーナーではサイクロプスは紹介されなかったんだけど、
記憶の片隅に「ルドンって確か…」というのが残っていて、
番組を見終わってから早速検索をかけたらビンゴだった、というわけ。
それほどインパクトのある絵なんだ、サイクロプス。
「新日曜美術館」の本日午後の再放送分は、
多摩市せせらぎの里美術館で催されている犬塚勉展について。
この人の絵は初めて見たのだけれど、
「梅雨の晴れ間」という、この時期にぴったりの絵は、
写真かと見紛うほどのリアルさだった。
写真かと見紛うばかりか、手前に描かれたハルジオンが、時折風に揺れて見えるほど。
素晴らしいなぁー。
けど、こういう絵ってきっと蕭白は「じゃぁ実物見りゃいいじゃん」て言うんだろうなー。
実物じゃ、いつも少しずつ変わっていく、例えば日の当たり方が変われば、
この絵の中の風景はもう違うものになってしまうし、
写真じゃ表現しきれないとこもある、
だから犬塚さんの絵は、絵にして正解の風景なんだろうなー、と思った。
美術はよぉわからんけどね。